「不確実性の時代の心構え」

日本経済新聞社大阪本社が主催した「NEXT KANSAI フォーラム 2026」で2月18日、日世の岡本明執行役員は万博での取り組みと不確実な時代におけるパーパスの重要性を語った。


日世は、三度の万博をまたいでソフトクリームを提供してきた。1970年の大阪万博、2010年に上海国際展示会、2025年の大阪・関西万博だ。その50年余りは、生活者が製品やブランドを選ぶまでのカスタマージャーニーにも大きな変化があった。

1970年代は「モノ消費」から「コト消費」に、少しずつ空気が傾いてきた時代だ。モノをつくれば何でも売れた高度経済成長期を経てモノが余りはじめ、製品やブランドにも“選ばれる”必要が出てきた。日世は、大阪万博でソフトクリームを販売し、アメリカで当たり前だった「食べ歩き」という文化を輸入。社会に行動変容をもたらしたことによって、ソフトクリーム市場は急拡大を果たした。カスタマージャーニーは、生活者が商品を知り(Attention)、興味を持ち(Interest)、ほしいと思い(Desire)、記憶し(Memory)、購入(Action)に至るプロセス「AIDMA」だった。

1990年代にインターネットが普及してからのカスタマージャーニーは「AISAS」に変化。生活者は商品に興味を持ったあと、検索(Search)を経て購入し(Action)、それを共有する(Share)ようになった。選ばれるためのストーリーづくりがさらに必要性を増すなか、日世は2010年の上海万博でソフトクリームの原料・コーン・フリーザーの「三位一体」セットを販売。本格的な中国進出を果たす契機となった。

そして、2020年前後のコロナ禍をきっかけに社会は一気にデジタル化。インフルエンサーの登場により、生活者は影響力を持つ人たちのレコメンドに従って、共感型の消費をはじめた。共感(Sympathize)→確認(Identify)→参加(Participate)→共有・拡散(Share&Spread)の、いわゆる「SIPS」と呼ばれるモデルだ。一億総インフルエンサー時代の主役は、生活者自身。消費行動そのものに意義が求められるため、製品やブランドが選ばれるストーリーだけではモノは売れなくなった。

そうした背景のなかで開催された2025年の大阪関西万博で、当社は3つの製品を出品した。古き良き日本のノスタルジーに浸れる、1970年代当時のソフトクリーム。「フードバリアフリー」を体現した、アレルゲンフリーのソフトクリーム。マシンが自動で盛り付けるソフトクリームだ。いずれもいまの時代に寄り添って、新たな価値を見い出す製品だったと考えている。

「これからはVUCAの時代だ」といわれて久しい。世界情勢ひとつとっても権威主義国家やグローバルサウスの存在感が高まり、一昔前のように、西側諸国の価値観を一元的に共有していくことは難しいだろう。さらに、急速に発展していくAIは、国家だけでなく個人にも甚大な影響をもたらす。こうした“かつてない不確実性”の時代でも、企業や人は生きていかなければならない。

そこで必要なのは「着眼大局、着手小局」。物事の全体像を見て進むべき方向を定め、目の前の小さなことから地道に着手していくという、200年以上も前の言葉だ。さまざまな位置や角度から物事をとらえる「鳥の眼・魚の眼・虫の眼」も有効だろう。多角的な視点を持つことで、本質が見え、進むべき道が決まる。

企業は本質を見つめたうえで「パーパス」を定めている。たとえば、日世グループのパーパスは「ささやかな幸せづくり」だ。ソフトクリームというサービス業を通じて、笑顔あふれる社会づくりに貢献することが、私たちの身の丈に合ったパーパスだと考えている。

自分が所属する組織のパーパスを理解することから始めるのもいいが、このカオスな時代においてはぜひ一歩踏み込んで、自分だけのパーパスも制定してほしい。大きなことを謳ったり、国や企業を模倣したりする必要はない。自分が何者なのかを考え、自分がしっかりとコミットできる、地に足の着いた社会貢献を考えればいいのだ。マイパーパスを定めることで、誰もがよりエモーショナルな人生を送れるようになるのではないだろうか。

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