共創の理念を未来につなぐ、最初の一歩に 万博レガシー継承イベント①

日本経済新聞社大阪本社は6月10日、大阪市内で「大阪・関西万博 レガシー継承イベント 万博後の新たなムーブメントの創出に向けて」を開催した。当日は約230人が集まり、講演やパネルディスカッションなどを通じて、万博での経験やつながりを未来にどう生かしていくかを考えた。日本国際博覧会協会の髙科淳理事・副事務総長の開会挨拶に続いて、大阪ガスの小原充裕氏、ロジスネクストの公受正道氏が講演。休憩時間には学生たちがそれぞれの活動を紹介するプレゼンテーションを行った。

万博の理念を継承する最初の一歩に

冒頭の挨拶では、万博協会の髙科淳副事務総長が、閉幕から半年余りが経過し、会場跡地で解体作業が進んでいることを報告した。万博協会では万博の開幕1周年に続いて、節目ごとにイベントを企画しており、「万博でできたつながりを確かめ合ったり、さらに広げたりするために非常に大事だ」と評した。

万博というと、華やかなパビリオンやイベントといった非日常的な空間で楽しく過ごすことに目が向きがちだが、「テーマウィークのように日常や現実を直視し、問題の解決方法を一緒に考えることも重要だ」と指摘。「様々な価値観を出し合い、いろいろな問題について認識したが、結論に至ったものはほとんどない。多くの議論は問題提起の段階ではないか」と述べ、「継続して考え続けることこそが、万博のレガシーをしっかりと受け継いでいくことになる。このイベントが、万博の理念を未来に継承していく最初の一歩になれば」と訴えた。

e-メタンを社会実装、カーボンニュートラルに貢献

企業講演では、大阪ガスの小原充裕・企画部カーボンニュートラル推進室長が登壇し、「大阪・関西万博での取り組みを踏まえた次世代エネルギーの展望」と題して発言した。

大阪ガスは次世代エネルギー「e-メタン(合成メタン)」の社会実装に向けて取り組みを加速している。e-メタンは二酸化炭素(CO₂)と再生可能エネルギー由来の水素を原料として製造する都市ガス原料で、CO₂排出量を実質ゼロにすることができる。e-メタンは、天然ガスの主成分であるメタンと同じ物質であるため、既存の都市ガスのインフラをそのまま活用できるのが利点だ。小原氏は「天然ガスを少しずつe-メタンに置き換え、シームレスに脱炭素社会へ移行していくというのがコンセプトだ」と説明した。

万博会場では会場内の生ごみを利用してe-メタンを製造するバイオメタネーションの実証実験を実施。製造したe-メタンは迎賓館の厨房などに供給し、「地産地消」のエネルギーシステムとして運用した。今後は大阪市の下水処理場などで実証実験を継続するほか、革新技術であるSOECメタネーションも含め、国内外で様々なメタネーション技術の開発・商用化を進め、e-メタンの普及を加速する計画という。

小原氏は「大阪ガスにとってe-メタンへの転換は、創業時のガス供給の開始、1970年代に石油由来ガスから天然ガスに転換したことに続く『第3の創業』だ」とし、「着実に取り組み、都市ガスのカーボンニュートラル化を実現する」と力を込めた。

対話の積み重ねが財産に

総合物流機器メーカーのロジスネクストは、「大阪・関西万博テーマウィークを契機に、物流の未来に向けた共創を加速する」をテーマに、公受正道・管理本部総務部長が講演。社外との共創を軸にした活動を継続していることを紹介した。

フォークリフトをはじめ、物流システムや港湾システムを手がける同社は万博のテーマウィーク協賛を契機に、若手社員を中心とした社内プロジェクトを発足した。「単なる協賛に終わらせず、将来に結びつける」との方針の下、有識者との対話を重ねる中で活動の幅を広げ、参加型プログラム「TEAM EXPO 2025」共創チャレンジにも登録。産官学と連携し、業種や立場を超えた多様なステークホルダーと交流を深めた。万博会場では、フォークリフトの遠隔操作体験や未来社会のビジネスアイデアを発表したといい、「社外から学ぶ価値をメンバーが実感した」と公受氏。

万博閉幕後は、万博プロジェクトのレガシーを引き継ぐ「共創・オープンイノベーションプロジェクト」を社内に設立した。2026年4月から27年10月を活動期間とし、対外的なイベント等で成果を発信するほか、将来的には社内スタートアップやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)設立につなげる考えだ。公受氏は「共創は特別なものではなく、気軽な対話の積み重ねから始まる。その蓄積が新しいものを生み、将来のつながりや財産になる」と述べ、万博を起点とした挑戦を継続していく姿勢を示した。

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