2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に出展する企業・団体とZ世代の若者たちによるセッションイベント「日経EXPOフォーラム Z世代と考える未来社会」が、9月28日に大阪国際会議場(大阪市)で開催された。
大阪国際会議場3階の特設会場には、Z世代の学生を中心とした参加者が続々と集まった。午前10時に総合司会を務めるテレビ大阪アナウンサーのウーデン・ジェニファー里沙氏が開会を告げた。
プログラムは、「博覧会マニア」として知られる二神敦氏による基調講演でスタート。その後の「未来共創セッション」は、立命館大学3年生の國分彩生氏と関西大学3年生の田井豊浩氏が司会を務め、「考える」「繋(つな)がる」「知る」「観る」をキーワードに学生と企業・団体の代表らが意見を交わした。
また、隣接する会場では、万博出展企業・団体や海外参加国、学生団体、自治体など約40のブースが出展。特設ステージでは2025年日本国際博覧会シニアアドバイザーの大崎洋氏と、トイトマ社長の山中哲男氏によるワークショップなども開催した。情報発信や意見交換を通じた積極的なコミュニケーションが随所で見られ、開幕まで200日を切った大阪・関西万博に向けて機運を盛り上げた。
【貴重講演】世界との触れ合い楽しんで
【貴重講演】
世界との触れ合い楽しんで
最初のプログラムは、日経EXPOフォーラムスペシャルナビゲーターの二神敦氏による基調講演「万博を楽しむ4つのポイント 観る! 知る! 考える! 繋がる!」。二神氏は博覧会マニアとして知られ、これまで166の博覧会に足を運んできた実績があり、工事中の会場や終了後の跡地も訪問しているという。独自の視点に基づく過去の傾向分析や、リアルな経験談には、二神氏ならではの万博愛があふれていた。
1つ目のテーマ「観る」では、会期終盤は大混雑するため、序盤での来場が狙い目であることを紹介した。また時間帯については「団体客が減る午後がおすすめ。ただ、17時直後は、お得な夜間券を利用する入場者で混雑することを想定しておくべきだ」と、アドバイスした。
2つ目のテーマ「知る」では、「万博は遊びではありません」とし、公衆の教育を主たる目的とした博覧会であることを強調した。また、パビリオンについても触れ、「万博の華は独自に建設するタイプAだけではない。協会が用意した施設を利用するタイプBやCも大きな魅力が詰まっている」と語った。
続くテーマの「考える」については、「万博は誰もが楽しめるかどうかの視点を大切にし、それが随所に反映されている」と説明。「来場者をどのように楽しませるのか、考え方やアプローチの仕方が国によって異なる点も体感できる」と、国内外の万博会場でボランティアやスタッフとして携わった経験を踏まえて紹介した。
最後のテーマ「繋がる」では、「万博は世界中の人々と繋がることができる絶好の機会」と指摘。「インターネットやSNSでも簡単に繋がれる今の時代だからこそ、直接の触れ合いやコミュニケーションを通じて繋がることの素晴らしさを体感してほしい」と熱い口調で締めくくった。
【未来共創セッション①】未来創造の議論に期待
【未来共創セッション①】
未来創造の議論に期待
「万博で『考える』 万博の意義は社会課題の解決!」と題した未来共創セッション①では、2025年日本国際博覧会協会の武田史織氏、三菱ロジスネクストの中村渉氏、京都大学経済学部2年生の上阪菜奈氏がパネリストとして登壇。大阪・関西万博会場運営プロデューサーの石川勝氏がファシリテーターを務めた。
まず、石川氏が「万博とはイチゴ大福のようなもの。皮=ハレの日の非日常体験、あん=社会・経済・文化振興への思い、イチゴ=より良い未来の創造。これらが三位一体となって、万博独特の魅力を生み出す」という自説で万博の概念を紹介。今回のセッションでは、「イチゴ=より良い未来の創造」のために必要な社会的課題の解決について話し合うことを説明した。
続いて、3人のパネリストがそれぞれの立場で感じている社会的課題について発表した。武田氏は「日本でのユニコーン(企業価値10億㌦以上の未上場企業)認知が少ないことによる国際競争性への影響」、中村氏は「荷物量の増加や働き手の減少がもたらす物流危機」、上阪氏は「誤認識や偏見などによるこども食堂運営の困難性」を挙げた。
会場からの質問も交え、それぞれの課題解決に向けて意見交換。ユニコーン候補の評価を世界基準で可視化すること、技術と制度のアプローチで持続可能な物流を共創すること、こども食堂はマイナスを補完するネガティブな場所ではなく子どもたちの活気にあふれたポジティブな場所だという事実を発信することなどの課題解決策が導き出されていった。
一連のセッションを終え、「現代の万博は、社会課題を解決し、より良い未来をつくるために議論する場でもある。今日のセッションも、万博の縮図だといっても過言ではない」と石川氏。壇上のパネリストも会場の参加者も、一様にうなずいていた。
【協賛講演①】パビリオン「日本館」 バイオガス発電を実装
【協賛講演①】
パビリオン「日本館」
バイオガス発電を実装
カナデビアの藤本恵美子氏は「いのちがめぐる資源循環 万博で『体験する』カナデビアの取組」のテーマで講演した。
同社が大阪・関西万博で携わる4つのプロジェクトについて紹介。博覧会協会と12の企業や団体が共同出展するパビリオン「未来の都市」では「In the world tree」をテーマに参加する。人と地球を支えるエナジーの源として「世界樹(world tree)」を設定し、「技術の力で、人類と自然の調和に挑む」をコンセプトに体験型の展示をするという。
また、「日本館」にはバイオガス発電プラントを設置するといい、「模型ではなく実働のプラントが入るパビリオンは、万博の長い歴史においても初めてのことではないか」とアピールしていた。
【協賛講演②】石黒浩氏のパビリオン 先頭で盛り上げる
【協賛講演②】
石黒浩氏のパビリオン
先頭で盛り上げる
長谷工コーポレーションの矢部拓斗氏は「万博で『50年後の未来社会・住まい』を考える!」と題して講演した。
「マンションのことならわかるんだ♪」でおなじみのCMソングをアレンジしたキャッチコピーを盛り込み、「未来の住まいもわかるんだ♪」のテーマでは、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーの石黒浩氏によるシグネチャーパビリオン「いのちの未来」館のプラチナパートナーであることを紹介。「関西の企業として、先頭に立って盛り上げていく」と抱負を語った。
最後は「人にとって豊かな暮らし方を追求したい。ぜひ万博会場で、未来の住まいを体感してほしい」とメッセージを投げかけた。
※本記事は日本経済新聞に掲載されたものを引用しています。