学生が万博後の活動に意欲 日経未来社会共創ゼミ

日本経済新聞社は9月27日、大阪・関西万博の開催に合わせて社会課題に取り組んだZ世代の若者たちが、これまでの実践とこれからの抱負について発表する催しを大阪・関西万博のフューチャーライフビレッジで開催した。学生団体の代表たちによる対談や、活動を発表する場を設け、学生たちはそれぞれの未来に向けて決意を示した。

日本経済新聞社大阪・関西万博室が、社会課題解決に向き合う学生らを対象に、学びや交流の場を設けてきた日経未来社会共創ゼミの一環で企画した。万博で実績のあった4組の学生団体を選び、万博のレガシー(遺産)につなげる狙いだ。

参加した学生や関係者たち

「まずは自分たちが楽しむ」

対談では、学生団体の代表4人と「未来の都市」パビリオンの大畠亮介副館長が登壇した。

万博の誘致を若者の立場から働きかけようと2016年に発足した学生団体「WAKAZO(ワカゾウ)」の成仁脩(そん・いんす)代表は「まずは自分たちが楽しみ、当事者意識を持って行動につなげるのが大切だ。大人たちがもっと学生に権限を持たせると活動は活発になる」と強調した。今後、「人生の最期の言葉」を通して死生観や人生の豊かさを考えるプロジェクトに注力するという。

大学の人材育成の一環で立ち上げた立命館大学万博学生委員会「おおきに」の高木葵凪代表は、食や環境など5つの班の活動を説明。「やりたい活動があっても、一歩を踏み出せない学生は多い。今回の万博のように行動に移せる場があるのは大切だ」とし、「それぞれの体験を共有し、万博から続く新しい道を創っていきたい」と力を込めた。

活動の発展に意欲を示す登壇者たち

教育事業を手掛けるImakuri Project(イマクリプロジェクト)の長野芽依代表は、万博関連の企画を通して企業3社との共創につながった経験から、「肩書きを外して声をかけ合える仕掛けが共創のきっかけになる」と指摘。より良い未来社会の構築に向け「もっと欲を持ち、自分のキャパを超えて成長していこう」と同世代に呼びかけた。

東京五輪・パラリンピックを盛り上げようと発足した学生団体おりがみは、大阪・関西万博でも共生社会をテーマに活動した。山岸荘汰代表は「いろんな立場や分野の人たちが交ざり合って新たな成果が生まれた」と振り返った。

大畠氏は、「未来の都市」パビリオンが日本国際博覧会協会と12の企業・団体で運営されたことに触れ、「今後様々な人や団体と共創していく中で、相手のニーズを深掘りし、自分たちが何を提供できるかをプレゼンテーションする力を磨くことが大事だ」と助言した。万博については、「我々が得た一番の財産は、人と人とのつながりだ。年代の隔たりを超えて、大切にしていきたい」と語った。

万博の意義を語る登壇者と来場者

企業との共創のポイント

学生団体4者の発表は、プレゼンやワークショップなど多彩な形式で実施した。

企業と連携して教育プロジェクトを実施したImakuri Project代表の長野さんは、垣根を超えて共創するポイントについて、連携先の2社の社長と共に伝えた。

電子制御機器を開発・製造する東阪電子機器(大阪府吹田市)の永野仁士社長は「自分の力だけでは無理だと認めることも大事だ。普段から出会いを求め、自分で問いを立てる力をつけると共創の輪が広がる」と述べた。

プログラミング教材を手掛けるAVAD(アバド、徳島市)の谷山詩温社長は「未完成でいいので一歩踏みだす行動が大切だ。少しでも何かを作る人、目的にまっすぐな人、正直な人とは自然に共創が生まれる」と自らの経験を踏まえて説明した。

長野さん(左)と共に共創のポイントを伝えた永野さん(右)と谷山さん(中央)

全国3カ所をつなぎアイデアコンテスト

地方での起業支援を手掛ける学生活動支援コンソーシアムStBASE(エスティーベース)は、岡山県と静岡県、万博の3会場をインターネット上でつなぎ、大学生や高校生のグループなど6者が地域課題の解決策を発表する「ローカルアイデアコンテスト」を実施した。

登壇者は、カブトガニを活用した地域活性化策や、マッチョな体格を生かしたインバウンド向けツアーなど様々な活動や構想を披露した。来場者からは「いろいろな地域の話を聞けたのが良かった」など、運営手法を評価する声が相次いだ。

発表自体を地域間の共創で実現した形で、進行役の馬越美佳さんは「日本全体を盛り上げるためには、それぞれの地域の思いや特色を生かしたビジネスが必要だということを肌で感じてもらえた」と手ごたえを感じていた。

全国3カ所をネット上でつないで開いたコンテスト

学校の枠を超えてチームを結成

多世代交流ワークショップMIRA−GE(ミラッジ)からは、全国の高校生4チームがプレゼンした。自分たちの関心のあるテーマについて、学校の枠を超えてチームを組んだのが特徴だ。

5校の5人でつくるチームは平和教育のあり方について提言した。プレゼンには3人の校長も立ち会い、東京都立日比谷高校の萩原聡統括校長は「他校の生徒と関わる中で多様な価値観に触れ、社会課題への理解も深まる」と講評した。

MIRA-GEを企画したエッジソン・マネジメント協会理事長の樫原洋平氏は「社会全体で次世代を育む文化を万博後も醸成していけば、それが最高のソフトレガシーになる」と今後も活動を発展させる方針を示した。

5高校の生徒5人が1チームとなって発表に臨んだ

来場者とワークショップ

立命館大学万博学生委員会「おおきに」は、社会課題に取り組む3班がそれぞれ考案したワークショップを来場者と共に実施した。

環境班のワークショップは、架空の島の環境問題を解決するため、オリジナルの道具や生物を考えるという内容。参加者は「海のごみをエネルギーにして進む船」などと多彩なアイデアを出していた。

架空の島の地図と環境問題の解決案を示したカード

多様性・異文化理解班は、世界を一周するすごろくを用意した。各国の文化を紹介するマスやクイズのマスがあり、参加者は遊びながら異なる風習や価値観などに触れた。

異文化への理解を促す世界一周すごろく

日本文化班は、伝統を継承していくためのきっかけづくりとして、飾り紐の水引作りと、扇子の模様を描く場を設けた。親子連れや若者が夢中になって取り組み、完成を喜んだ。

学生(右)の手引きで水引を作る親子

全ての班が、万博閉幕後も活動を継続する意欲を示した。

「万博はゴールではない」

進行役を務めたコンサルティング会社ドリアイイノベーションの林俊武代表社員は、大阪・関西万博について「大企業や国のパビリオンを見に行くだけではなく、皆で参加するという概念が初めて導入された万博だった」と言及。「万博はゴールではない。学生や企業がつながり合える場をこれからもつくり、やりたいことをさらに加速させていこう」と訴えた。

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