「アルファ米」×「菓子」災害食ワークショップ Z世代がSNSでの普及策を提案

日本経済新聞社は5月31日、災害食について学び、普及方法を考えるワークショップを大学生や高校生向けに開いた。湯や水を注ぐだけで食べられる「アルファ米」を使い、スナック菓子を加えて食べるアレンジレシピなどを試した。

社会課題の解決に向き合うZ世代の学生や団体が、企業などと共に持続可能な社会づくりについて考える連続講座「日経未来社会共創ゼミ」の一環で開催した。長期保存食メーカーの尾西食品(東京・港)、菓子メーカーのカルビーと連携して実施した。

アルファ米とポテトチップスで災害食を作る

「ローリングストック」が要

長期保存できるアルファ米について、尾西食品の栗田雅彦取締役が解説した。

炊きたてのコメを急速乾燥して作るアルファ米は、水やお湯を加えると炊きたてのような食感と風味が戻る。賞味期限は5年で、災害対策用の保存食として多くの自治体や企業が採用している。近年は、海外旅行者や登山者など個人需要の割合が高まっており、日本人宇宙飛行士の宇宙食としても愛用されているという。

栗田氏は、自然災害が激甚化・頻発化するなか、自分の身の安全を自分で守る「自助」の重要性を指摘。「非常食を日常に取り入れた上で、食べた分は補充して一定数備蓄するローリングストックが災害時に役立つ」と強調した。

学生たちに作り方を助言する栗田氏(左)

災害時も「お菓子で体と心の栄養を」

続いて学生たちは、尾西食品が災害時の「手軽でおいしい食事」として提案している、菓子と組み合わせたアレンジレシピに挑戦した。

尾西食品のアルファ米「尾西の白飯」にお湯を入れてふっくらとしたご飯に戻した後、砕いたポテトチップスと少量の塩昆布を入れて混ぜ、おにぎりにして試食。カルビーの「ポテトチップス関西味浪漫 味付けのり風味」の甘じょっぱい醤油味がコメのうま味に絡み、ポテトチップスのザクザクとした食感がいいアクセントになっている。

楽しみながらおにぎりを作る学生たち

災害時に「体と心の栄養を」

兵庫県立大学の学生災害復興支援団体LANに所属する森愛華さん(2年)は「想像以上においしかった。能登半島地震の被災地を訪れた際、震災時に米がなかったという話を聞いた。備蓄しておけば、いろいろな人が飽きずに食べられる工夫にもなる」。留学生のカン・テウォンさん(大阪公立大学4年)は「ご飯とお菓子が合うのかと思ったが、本当においしかった。作り方も簡単で、寮でも備えておきたい」と評価した。

カルビーの管理栄養士で防災士の松川和乎氏は「お菓子は体の栄養になるが、心の栄養にもなる。災害はとても暗いイメージだが、いざという時はアレンジレシピでちょっと楽しくなるという今回の体験を生かしてほしい」と呼びかけた。

「体験を生かして」と呼びかける松川氏(右)

SNS活用しイメージしやすく

災害食の普及方法についての意見交換では、次世代に災害食の備蓄を促す仕掛けとしてSNSが挙がった。災害時に困る場面をショートドラマ形式にして想像しやすくするといった工夫や、一人暮らしの学生向けに「簡単に作れるおいしい食べ物」という切り口で動画を作り、災害食を日常食に落とし込む発想などが提案された。

京都産業大学2年の木村桃麻さんは災害食も含めて自分の推し商品を集めた「推し防災バッグ」作りを発案。「多くの人がSNSにアップして流行すれば、防災について広く知ってもらえる」と話した。

若者の視点で意見を述べる学生たち

留学生からの視点として、谷凝藝さん(大阪公立大学博士前期課程2年)は「外国人に対しては多言語化が大事だ。保存食にも外国語の表記があれば」と言及。水都国際高校3年で防災部部長の出水眞輝さんは、9歳で防災士の資格を取得し、啓発活動をしてきた経験を踏まえ、「防災について学ぶ場所が十分ではない。小中学校をはじめ、いろんな所で学ぶ機会や場所があればもっと日本の未来は明るい」と訴えた。

進行役を務めたコンサルティング会社、ドリアイイノベーション(大阪市)の林俊武代表社員は「災害食は自然災害だけでなく、パンデミックや大規模停電でも必要になる。非日常のものだが、日常でも食べられるようにする普及方法が必要だ」と指摘した。企業関係者は、SNSの活用などを早急に進める考えを示した。

意見を交わす林氏(左奥)と出水さん(右奥)

「万博を伝えるワンフレーズ」優秀作品の発表も

ワークショップの終了後は、「万博を誰かに伝えるワンフレーズ」の優秀作品を発表した。大阪・関西万博の機運醸成に向けて4月に学生から募集した作品の中から投票によって選ばれた。

学生による投票の第1位は「世界をまるっと日帰り旅行」。企業・団体関係の投票の第1位は「世界と未来がギュッとつまった夢洲」。全投票の第1位は「夢洲でかなえる世界と未来旅行」だった。

「世界と未来がギュッとつまった夢洲」を考えた長野芽依さん(同志社大学4年)は「世界のいろんな国々が集まって、お互いの文化を理解しようとしている姿や、民間企業によるパビリオンや催し、非日常の世界が詰まっているのが夢洲という場所だと感じた」と作成の意図を説明した。

ゼミに参加した大学生や高校生、ビジネスパーソンたち

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