日本経済新聞社は5月25日、高校生が大学生や社会人と共により良い社会の築き方を考える「未来共創型・多世代ワークショップ」を大阪本社(大阪市)で開催した。
参加者は、大阪・関西万博のテーマや技術を踏まえ、学校など身近な環境から世界の状況まで、自身が実現したい社会の姿を模索した。達成に必要な課題解決の方法やすぐに取り組める行動について、世代の壁を超えて意見交換した。

この催しは、大阪・関西万博への参画や社会課題の解決に意欲のあるZ世代の学生を対象にした連続講座「日経未来社会共創ゼミ」の一環。これからの社会を担うリーダー人材の育成に産官学連携で取り組む一般社団法人エッジソン・マネジメント協会(東京・中央)と協力して開いた。

向き合いたい「社会」を定義
高校生と大学生、ビジネスパーソンらが交ざった5人1組のグループに分かれてワークショップに取り組んだ。進行役はエッジソン・マネジメント協会の樫原洋平理事長が務めた。
樫原氏は、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を紹介し、「向き合いたい社会を自ら定義し、個別に考えていくのが重要だ」と指摘した。
参加者たちは、家の近所や学校、世界など、自分が取り上げたい「社会」を設定。その「社会」について、2050年に「なってほしい姿」と「なってほしくない姿」を考えながら、自身の興味や関心、価値観を整理した。
思考の整理方法や説明の手順が学びになり、井上潤さん(桜和高校2年)は「自分の意見を人に伝えるのは苦手だったが、ワークショップを通してできるようになり驚いた」と話す。

万博の技術で未来イメージ
日本経済新聞社大阪・関西万博室の楢崎健次郎室長が、新聞紙面に掲載された記事を紹介。自律走行するゴミ箱ロボットや、移動式オフィス、宙に浮く靴などの未来社会の技術について情報提供した。
「いろいろな技術があるが、その技術を未来につなぐのは人だ。皆さんが描く未来に向けてどのように使えるかイメージしてほしい」と呼び掛けた。
参加者は、大阪・関西万博で公開されている技術を参考にしながら、どうやってそれぞれの理想を実現するか考えた。

共創リーダーの育成へ
最後に各グループは、それぞれ1つの「社会」テーマを選び、その理想像と課題を明確化。今からできる行動ついて話し合った。
「世界の全ての人の格差がなくなる社会」を取り上げたグループは、「対立」や「独占」が課題になるとして、「多様性を知る機会を設けるのが大切」という結論を導き出した。
将来、起業も視野に入れているという大和明夏さん(天王寺高校1年)はワークショップでも積極的に意見を述べ、「いろいろな立場の方から多くの気づきをいただいた。まずは身近な人に成果を伝えてコミュニティーをつくり、それを広げながら25年後の未来につなげていきたい」と力を込めた。
学校教育をテーマに議論した宮崎鉄平さん(桜和高校2年)は「立場や年齢の違う5人が協力し、コミュニケーションを取りながら一つの意見をまとめていく過程そのものが自分の成長につながる。この経験を学校や他の活動にも生かしていきたい」と話した。
樫原氏は「皆さんのような人が自分さえ良ければいいと思ってしまうと社会は成り立たなくなる。ぜひ立場や年齢を超えて共創を主導するリーダーになってほしい」とエールを送った。

決意新たに
ゼミの後は、参加者による交流会を実施。高校生たちが、他校の生徒や大学生、ビジネスパーソンらに積極的に話しかけ、今後に生かそうとする姿が見られた。
中戸日加利さん(桜和高校2年)は「今回のゼミをきっかけに様々なイベントに参加し、人のためになるとはどういうことなのかをもっと深掘りしていきたい」と目を輝かせた。社会について考えるイベントに何度も参加しているという安藤悠太さん(天王寺高校2年)は「実社会は答えのない問題ばかりだが、考えを共有し、追求し続けるのが大事だと改めて実感した。物事を多角的に見てリーダーシップをとれる人になっていきたい」と意欲を示していた。
