日本経済新聞社は11月29日、Z世代の学生向けの連続講座「日経BANPAKUゼミ」の第5回会合を大阪本社(大阪市)で開催した。
社会課題の解決や大阪・関西万博に向けた活動のブラッシュアップを図る同ゼミ。学生たちが第1回から行ってきた実践発表会は最終回を迎え、団体や起業家ら4者が登壇した。第1回から累計21の個人・団体が発表した。
ワークショップでは、学生たちが自分の人脈を整理し、応援してもらえる人を増やすための作業に取り組んだ。
アドバイザーは、地方創生や探究学習支援を手掛ける横田アソシエイツ(東京・中央)の横田浩一代表取締役と、新規事業開発を支援するトイトマ(東京・品川)の山中哲男社長が務めた。
所属や分野超えた「対話の場」で伝統文化を活性化
伝統文化の活性化に取り組む「Kyoto T-Plaza(キョウトティープラザ)」代表の石田諭基さん(同志社大学2年)は、所属や分野を超えて対話する「場づくり」の実践について発表した。伝統工芸や伝統芸能などの担い手を招いた定期交流会を開いてきたという。企業と連携した商品開発も手掛ける方針を示し、「多様な文化が共存するジャパンブランドや地域経済の活性化につなげたい」と抱負を語った。
事業展開の手法として、山中氏は「伝統文化は対象が広いため、まずは1つターゲットを絞った方がいい」と助言。石田さんは「優先順位をつけて取り組んでいきたい」と応じていた。
世界との出会い「遊び」で創出
「立命館大学万博学生委員会おおきに」の多様性・異文化理解班は、世界の人々が相互理解を深められる「遊び」づくりに挑戦している。同じ単語を違う言語で表記したカードを用意し、チーム戦で正しい組み合わせを選ぶゲームを大阪・関西万博の会場で披露する計画について話した。平山翔太さん(1年)は「参加者が一期一会の出会いを体験できるようにしたい」と思いを述べた。
ルールの難易度の調整に悩んでいると明かすと、山中氏は「海外の人たちと実践の場を設けながら突き詰めていけばどうか」と提案。玉島悠成さん(2年)は「留学生のコミュニティーと取り組んでみたい」と話した。
フィリピン・セブの貧困問題解決に向け雇用創出
フィリピン・セブの低所得者層の雇用創出と生活自立支援を目的に活動している「Switch My Angle(スイッチマイアングル)」は、現地の人に雑貨やアクセサリーの製作を委託し、製品を日本で販売。売り上げを製作者の給料にする活動をしている。山田彩乃さん(関西学院大学3年)は「安定した給料を渡して、必要なものを必要な時に購入できる人を増やしたい」と思いを語った。
現在は、支出が収入を上回っている状況といい、山中氏は「お願いして買ってもらうのではなく、欲しいから買う商品にできないか」と指摘。神山陽菜乃さん(関西学院大学3年)は「他のところと差別化できる商品の開発を考えていきたい」と意欲を示した。
生徒同士の教え合い マッチングで不登校防ぐ
「takeforest(たけふぉれすと)株式会社」の代表取締役、竹森洸征さん(大阪公立大学博士前期過程1年)は、子どもたちが自信を失って不登校になる問題の解決に向け、オンラインで中高生同士が勉強を教え合うマッチングサービス「ぷち勉」について発表した。1回につき1問だけ扱うのが特徴という。竹森さんは「解く側には低いハードルで小さな成功体験を積んで自信をつけてもらい、教える側には指導体験を通して社会で必要な力を習得してもらう」と狙いを語った。
普及方法を課題として挙げると、横田氏は「マッチングサービスとしてさまざまな展開が可能」と事例を示し、竹森さんは「柔軟に対応していきたい」と応じた。
自分の人脈を可視化
ワークショップでは、自分を応援してくる人を増やすための手法に学生たちが挑んだ。
成功した起業家の思考や行動を体系化した意思決定理論「エフェクチュエーション」について横田氏が解説。取り組み方の一例として、人脈を整理する手法を示した。
学生たちは、自分が思いつく限りの知り合いの名前を書き出し、名前の横に自分にとって必要な役割を書き足す作業に取り組んだ。横田氏は「人脈はビジネスを回していくための一番の基本になる」と意義を説いた。
ゼミの冒頭では、日本経済新聞社の記者が、万博に向けた雇用や会場整備の進展について解説。会場への交通手段は、鉄道とともに舟運が整備され、万博以降の防災面での活用も期待されていることなどを話した。
ゼミ終了後は、参加した学生とビジネスパーソンらによる交流会も開いた。
最終回となる次回のゼミは12月20日、大阪本社で実施する。
参加者全員が、ゼミを通して学んだことなどについて、団体ではなく個人の立場で発表。今後に向けた「決意表明」の場にする。修了証の授与も行う。