顧客視点で活動をブラッシュアップ 第4回「日経BANPAKUゼミ」

日本経済新聞社は10月25日、Z世代の学生向けの連続講座「日経BANPAKUゼミ」の第4回会合を大阪本社(大阪市)で開催した。

社会課題の解決や大阪・関西万博に向けた活動のブラッシュアップを図る同ゼミ。主体的な学びを促す「アクティブラーニング」のプログラムは、全3回の最終回を迎え、学生たちは顧客の視点を持つ大切さについて理解を深めた。

恒例の活動発表会には、子どもの支援や食の問題などに取り組む学生団体と個人の4者が臨んだ。

顧客の視点で活動のブラッシュアップに取り組む学生たち

アドバイザーは新規事業開発支援を手掛けるトイトマ(東京・品川)の山中哲男社長と、ベンチャー企業支援会社54(東京・豊島)の社長で個人投資家の山口豪志氏が務めた。

「推し」のピンチを救い、社会を変える力を育成

中高生向けの法教育を研究している宮本あゆはさん(岡山大学大学院博士後期課程1年)は、授業でグループワークなどに取り組む際、頭のいい人の意見の方が正しく、自分の意見は間違いだと思って発言できない雰囲気を問題視。主体性を引き出す仕掛けとして、「推しのピンチを救うストーリー」で法律の考え方を学ぶアプリ作りに挑戦していることを伝えた。

キャラクターとの対話を通して、ピンチの解決に必要な法律の在り方を考えてもらうという。「全国の全ての中高生が楽しく学べるようになれば、より良い社会に変わっていく」と意義を説いた。

山中氏は「推しやピンチの設定の内容によって、利用の広がり方が変わる」と事例を示し、宮本さんは「より効果的な設定の解像度が上がった」と手応えを感じていた。

主体的な学びを促す仕掛けを考案した宮本さん

「高大生」×「子どもの夢支援」で離職率減らす

卒業後にやりたいことが見つからない大学生や新卒者の離職率を減らそうと活動する任意団体「ひるるくる」からは、尾崎星さん(甲南大学4年)と嶋崎愛文さん(神戸大学4年)が登壇した。

同団体は、高校生向けに進学の目的を明確にする受験指導を実施。このほか高校生と大学生が企業などと連携して、小学生らのやりたい「夢」を実現するプロジェクトに参加する取り組みをしている。児童らを支援することが、自分たちは何をしたいのかを考えるきっかけになるという。活動を通じて学生と企業のマッチングも行い、離職率低減につなげたい考えだ。尾崎さんは「わくわくする社会を自らつくりだしていく人が増えていけば」と思いを語った。

山中氏は「やりたいことだけでなく、何にやりがいを感じるかを発見できる仕組みもつくってみて」と助言した。

事業の流れを説明した尾崎さん(右)と嶋崎さん

こども食堂を「第三の居場所」に

こども食堂を運営している学生団体「からふる」の福本航大さん(京都大学2年)は、子どもは学校や家庭に居場所がないと「相談やささいな話ができず、将来への希望の喪失につながっていく」と指摘。食事を目的に気軽に利用できる子ども食堂を「第三の居場所」として展開し、「不安感や孤独感を抱える子どもたちを減らしたい」と力を込めた。約100人の学生が所属しており、1対1の丁寧な対応ができることが強みだという。

一方で、支援が行き届いていない層があると分析しており、山中氏は「食事や遊び以外のコンテンツも考えてみては」と提案。BANPAKUゼミでさまざまな団体と交流を深めてきた「からふる」の上阪菜奈さん(京都大学2年)は「他団体とコラボして取り組んでみたい」と意欲を示していた。

こども食堂の取り組みを示した福本さん(右)と上阪さん

「タンパク質危機」に植物性食品を啓発

立命館大学万博学生委員会おおきに「SusTable(サステイブル)」は、世界の人口の増加や気候変動によって、たんぱく源となる動物性食品の生産が追いつかなくなる問題に着目。大豆などの植物性食品を試食してもらう企画「相席食堂」について説明した。池本咲季さん(2年)は「おいしさを知ってもらい、日常の食の選択肢にしたい」と抱負を語った。

大阪・関西万博でもイベントを行う方針だが、世界各国の来場者に何を出すのか悩んでいると伝えると、山口氏は「日本食といった日本らしいエッセンスを加えるのはどうか」と提案。山中氏は「世界共通の調味料などを使っておいしさの違いを楽しめるようにするのも面白い」と助言した。サステイブルの草野結香さん(1年)は「アイデアを生かし、楽しく食事できる環境をつくりたい」と話した。

植物性食品の意義を紹介した池本さん(左)と草野さん

「欲しい人」特定し、「わくわく感」発信を

第2回ゼミから始まったアクティブラーニングの最終回は、顧客の目線に立って事業分析する重要性を山中氏が解説した。商品やサービスを提供したい人を一方的に考えても、対価が得られなければ活動を継続できないためだ。「お金を払ってでも欲しい人は誰かを特定してほしい」と呼びかけた。

また、商品・サービスの発信内容は、「価値観の変容に合わせて」と述べ、機能や性能という「機能的価値」ではなく、体験で得られる「わくわく感」といった「情緒的価値」を重視して打ち出すように促した。

一方、資金調達の手段に話が及ぶと、個人投資家の山口氏は投資の判断基準について「決め手は本気度」と言及。「詳細な調査やいろんな人の意見を踏まえ、自分なりの考えに落とし込む姿勢が、最終的にお金や応援してくれる仲間に結びつく」と持論を展開した。

学生らは、自身の活動に合わせて考えを整理すると、参加者同士で熱心に意見交換していた。

顧客の視点に立つ大切さを説いた山中氏(左)と山口氏

ゼミの前半では、日本経済新聞社の記者が、大阪・関西万博の目的について、世界各国との文化交流だけでなく、ビジネス機会の創出が重視されている点を解説。「大阪の街に何を残し、何が発展するのか関心を持ってほしい」と話していた。

ゼミ終了後は、参加した学生とビジネスパーソンらによる交流会も行った。

第5回は11月29日に大阪本社で実施する。

第4回「日経BANPAKUゼミ」に参加した学生とアドバイザーの皆さん

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