第2回「日経BANPAKUゼミ」で学生5団体が発表 ビジネス設計の講座も開始

日本経済新聞社は7月26日、社会課題解決を目指すZ世代の学生向け講座「日経BANPAKUゼミ」の第2回会合を大阪本社(大阪市)で開催した。

社会課題の解決や大阪・関西万博に向けた学生たちの活動のブラッシュアップを図る同ゼミ。第2回には38人が参加し、健康や文化などをテーマにした5団体が発表に臨んだ。

「第1回アクティブラーニング講座」に参加する学生たち

後半の「第1回アクティブラーニング講座」では、ビジネスの骨子を設計する手法を指南。学生たちは顧客層を絞る重要性について学んだ。アドバイザーは新規事業開発支援を手掛けるトイトマ(東京・品川)の山中哲男社長と、ベンチャー企業支援会社54(東京・豊島)の山口豪志社長が務めた。

健康データを収集、「恩送り」の循環型社会へ

医学生を中心にした学生団体「WAKAZO(ワカゾウ)」代表の成仁脩(そんいんす)さん(大阪医科薬科大学3年)は、健康に関するデータを任意で提供し合い、お互いの健康や救命に役立てていく仕組みづくりを提案。「恩送りでつながる循環型社会を実現したい」と力説した。命について考えてもらう一環で、人生の最期に遺したい言葉を集めるプロジェクトを展開していることも紹介した。

山中氏は「データを取った後、行政や企業とより深く連携していくことが大事」と事業の手順を助言。成さんは「今後何を実践していけば良いか整理ができた」と目を輝かせていた。

献血制度のように健康に関するデータを任意で提供し合う構想を説明した成さん

地方での起業支援を包括的に

地方での起業支援を手掛けている「学生活動支援コンソーシアムStBASE(エスティーベース)」からは、学生代表の加藤尋矢さん(サイバー大学3年)が「起業したくても踏み出せていない人がいる」と問題提起。経験・環境・情報の不足を包括的に支援するため、イベントから事業支援まで手掛けていることを説明し「学生がビジョンを持って歩める社会をつくる」と力を込めた。

山中氏が人と人のつながりを築く大切さを説くと、加藤さんは「たとえ人生の先輩であっても、自分が解決できる困り事があればがむしゃらにやり、つながりを大事にしていきたい」と意欲を見せた。

地方での起業支援のポイントを示した加藤さん

伝統文化を未来へつなぐ

学内の有志学生でつくる「立命館大学万博学生委員会おおきに 日本文化班」副リーダーの池田朱里さん(2年)は、茶道や着物といった日本の伝統文化を巡り、「若者を中心に興味のある人が減少している」と指摘。ものづくりや盆踊りなどの体験企画を通して「受け継がれてきた日本文化を未来へつないでいきたい」と熱意を示した。

山口氏は「どのような人たちにどんな時代観の日本を伝えたいのか、より具体的にしてみて」と深掘りを勧め、池田さんは「日本文化が難しいと思っている若者にかわいいと思ってもらうのも良い」と話した。

日本の伝統文化を継承する活動を説明する池田さん

食育で健康寿命の延伸へ

奈良県内で管理栄養士養成課程がある4大学の学生たちでつくる「ヘルスチーム菜良(なら)」は、自立して生活できる「健康寿命」を延ばすため、子どもたちへの食育を重視。ゲーム形式で行う食育活動などを披露した。藤本詩織さん(帝塚山大学3年)は「幼いころから正しい食事意識を育むことで、国民全体の健康寿命の延伸に寄与したい」と意欲を見せた。

山口氏は「子どもに食事を提供する親への啓蒙も必要になる」と指摘。松原真里奈さん(帝塚山大学3年)は「保護者用のレシピを発信するなど、できることを考えていきたい」と応じていた。

子どもへの食育を通して健康寿命の延伸を目指す藤本さん(左)と松原さん

SNSの食い違いなくせ

コミュニケーションに関心のある学内の有志学生で構成する「立命館大学万博学生委員会おおきに CWA班」は、「誰とでもコミュニケーションを取る」をテーマに、交流サイト(SNS)で相手を怒らせずにメッセージを送るゲームを作成することなどに取り組む。高木葵凪さん(2年)は「生まれたときからSNSが身近なZ世代だからこそ、コミュニケーションの齟齬(そご)について考えていきたい」と思いを語った。

山中氏は「年齢や文化のギャップを埋めることに焦点を当ててみて」とアドバイス。南瑠菜さん(2年)は「コミュニケーションの文化の歴史を整理し、齟齬の解決に向けてできることを考えてみたい」と熱意を示した。

SNS上のコミュニケーションの食い違いを解決していく方針を示した南さん(左)と高木さん

最初に顧客を絞る

第1回アクティブラーニング講座では、山中氏が商品・サービス開発のポイントをレクチャー。誰の課題を解決するのか「顧客の顔」をできる限り具体的にするよう求め、「最初は対象を狭くした方が設計しやすく、メッセージも届けやすい」と事例を挙げながら解説した。

取り組むテーマの難易度が高い場合、「まずは気軽に提供できるところから始め、自分たちが成長したときに顧客も広げていくのが重要」と持論を展開。さらに「顧客の本質的な課題やニーズは非合理的、非効率的でないと提供できないことが多い。選択肢から排除しないよう注意して」と呼び掛けた。

学生同士や、学生とアドバイザーで意見交換する時間もあり、積極的に対話する姿が見られた。

アクティブラーニング講座を実施した山中氏(左)と山口氏

ゼミでは、日本経済新聞社の記者が大阪・関西万博の建設現場の工夫などを伝えたほか、終了後には参加した学生とビジネスパーソンらの交流会も実施。同社大阪・関西万博室の今井博司シニアプロデューサーは「次回も会えるのを楽しみにしている」と期待を寄せていた。

第3回は9月20日に大阪本社で開く。

第2回「日経BANPAKUゼミ」に参加した学生とアドバイザーの皆さん

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