日本経済新聞社大阪本社が主催した「NEXT KANSAI フォーラム 2026」で2月18日、NANKAIの寺田成・まちづくり推進室グレーターなんば創造部長は同社のまちづくりの取り組みについて講演した。

鉄道会社は古くから、多角化経営を求められてきた。戦前の鉄道会社が、鉄道と発電という二つの事業を収益源にしていたことからも、その特性はうかがえる。アメリカの経営学者のアルフレッド・チャンドラーは、多角化を「範囲の経済」と「規模の経済」が重要であると指摘した。鉄道会社では、地域全体の経済効果を高める「範囲の経済」に経済的メリットがあると考えられえる。住宅開発によって沿線を作り上げた阪急電鉄創業者・小林一三のモデルが有名だろう。とりわけ鉄道会社には、沿線のまちづくりを通じて「範囲の経済」をいかに実現するかが問われてきた。
しかし近年は人口減少と東京一極集中により、乗降客数増加を前提にした従来のモデルは、実現が困難になってきた。今後も「範囲の経済」において社会に貢献していくには、新たな手法を確立する必要がある。そこで、南海電鉄は組織再編を実施。鉄道事業を受け継ぎ、公共交通の持続的成長を図る「南海電気鉄道株式会社」と、まちづくり戦略や新規事業を通じて飛躍的な成長を追求する「株式会社NANKAI」に分社化し、両輪での活性化を目指していく。

そうした流れのなかで、すでに推進されている取り組みのひとつが「グレーターなんば」だ。これまでの「乗降客数を増やすためのまちづくり」から「沿線内外の暮らしの価値を高めるまちづくり」への転換点になるプロジェクトだといえる。従来のように乗降客数を直接増やすような取り組みではないため、公益性と事業性の両立を目指しながら、新たな循環モデルを構築していかなければならない。
そもそも「グレーター」とは、1920~30年代にロンドンやベルリン、東京などで注目されていた都市拡張の概念だ。中心街から郊外をまとめて成長させていく当時の思想を踏まえ、現代の文脈で解釈しなおしたのが「グレーターなんば」だといえる。そのコンセプトは「エンタメダイバーシティ」。ビジネスの中心地にするのではなく、エンタテインメントを軸にした、多様な楽しみ方ができるまちづくりを掲げている。

なんばエリアでは、南海電鉄がこれまで手掛けてきたなんばCITYやなんばパークス、なんばスカイオといった既存の資産をさらに深化させていく。合わせて、2031年開業予定の新なんば駅周辺を核とした不動産開発や、公共空間の利活用も欠かせない。たとえば、1988年にロータリーが整備されたなんば広場は、歩行者の過密や放置自転車といった課題を抱えていた。しかし、商工会議所や民間からの発意によって、ウォーカブルな広場づくりがスタート。いまでは南海電鉄もその一翼を担い、回遊性の高い都市空間づくりに取り組んでいる。ビルの狭間に生まれる空き地などでも、イベントを積極的に開催。「なんばに来ればなにか面白いことがある」といった状況の日常化を目指す。2024年12月に通天閣をグループ化したことも、エリアの回遊性やインバウンド需要を高めるうえで、重要な一手となった。
また、街で生まれるエンタメの担い手を集め、育成していく視点もある。吉本興業の存在によってお笑いを志す若者がなんばに集まるように、さまざまな分野で勝負をし、土地を盛り上げていこうとする人たちを、NANKAIは黒子としてバックアップしていく。

これまでのグレーターは拡張していく都市を指していたが、グレーターなんばが目指すのは「拡張」ではなく「編み直し」だ。もともとの魅力や歴史の積み重ねをどのように編み直し、新たな価値を提示していくか。100年にわたって積み上げられてきた都市の営みを踏まえ、次の100年、150年に耐えうる在り方を考えていく。それこそが、グレーターなんばが担う役割だ。
