
首都圏のエネルギー需要を支えるENEOSの根岸製油所と同社の研究開発拠点である中央技術研究所(横浜市)を9月26日、日経BANPAKUレポーターら6人の学生が見学に訪れた。
1964年に操業を開始した根岸製油所は敷地面積約220万㎡、原油処理能力は1日当たり15万3,000バーレルにのぼる。LPガス、ガソリン、ジェット燃料など幅広い石油製品を精製し、主に関東一円に供給する中核拠点だ。
学生たちはエネルギーの安定供給体制と、中央技術研究所においてはカーボンニュートラル社会の実現に向けた先進的な研究開発の取り組みについて理解を深めた。
安全対策と生物多様性保全の取り組み
学生たちは製油所の概要、石油製品の精製プロセスに関する説明を受けた後、バスで敷地内を移動し、原油の蒸留装置や不純物の除去装置、ガソリンの改質装置などを見学した。
同志社大学4年の長野芽依さんは「これほど多くの工程を通して製品が届けられていたとは」と目を見張る。

製油所はJR根岸駅を挟んで住宅地や店舗、主要道路が近い「都市型製油所」であることから安全・防災と環境配慮に注力している。施設内の防消火設備や空気汚染対策用装置のほか、湾内の桟橋に停泊していた海外船籍のタンカーの荷役にも遭遇し、輸出入や消防艇、オイルフェンスについて質問した。
施設内に設けた26万㎡の緑地帯(グリーンベルト)も散策した。緑地は環境省の「自然共生サイト」に認定されており、緑地内に“光と風”を導入する里山管理手法を用いた生物多様性の保全区域となっている。希少生物保護やソーラー電源の除草ロボットなどの取り組みについて説明を受けた。
慶應義塾大学4年の丸山聖可さんは「石油産業と聞くと環境負荷を連想しがちだが、これほど生物多様性保全に注力されているとは思わなかった」と、同社の環境への意識の高さに驚きを示した。

次世代エネルギーの活用に向けて
中央技術研究所ではENEOS中央技術研究所首席研究員の菅野秀昭氏から次世代エネルギーの活用に関する課題についてレクチャーを受けた。日本の再生可能エネルギーをめぐる地理的・経済的制約や同社の現状認識に加え、合成燃料をめぐる研究開発について解説が行われた。

続いて、合成燃料・プロセスグループチーフスタッフの箱龍介氏に案内され、研究所内の合成燃料の実証プラントを見学した。この実証プラントは2024年9月から運転を開始しており、水素とCO2を原料として合成燃料(ガソリンやジェット燃料などの石油系燃料と同等の取り扱いが可能な液体燃料)の製造までを単一プラントで一貫して行うのは日本初の取り組みだという。原料の一部には、大気から回収したCO2も使用している。

見学後の質疑応答では、再生可能エネルギーの活用や合成燃料をめぐって理解を深めた。京都大学4年の吉田健太さんは「合成燃料は学校で学ぶような簡単な化学式から技術化されていることに驚いた。開発者の方々から直接話を受けることができたのは貴重な機会だった」と感銘を受けていた。
慶應義塾大学2年の江頭奈桜さんは「石油というシンプルな原料から多様な製品が生まれていることに改めて実感した」と語り、石油産業の裾野の広さを再認識。
國學院大學2年の川辺愛さんは「日々の生活で意識することのないエネルギーは、現場の方々の多くの試行錯誤によって支えられていることに気づいた」。
静岡大学4年松岡大輝さんは「よく目にするなじみ深い企業が目の前の事だけはなく、何年も先の未来について考え抜かれていることに感動しました」と胸を打たれていた。

