2050年の社会とエネルギーの姿をテーマに石油元売会社の若手社員と学生が交流

大阪・関西万博のテーマウイーク「SDGs+Beyond いのち輝く未来社会」期間中の10月10日に、日本経済新聞社と石油連盟は共催で、「サステイナブルなエネルギーを社会に」をテーマにイベントを開催した。これに先立ち9月16日、石油連盟会議室(東京・千代田)において、石油連盟加盟社の若手社員と、日経BANPAKUレポーターを中心とする大学生たちとの交流会を開催した。

交流会の冒頭、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の横田浩一氏が「なぜ2050年を考えるか」と題し、人口減少に起因する日本の2050年における課題について講義した。50年を起点にバックキャストして課題解決を模索することの重要性を指摘した。

石油各社の最新の取り組みを紹介

交流会には、石油連盟に加盟する石油元売会社の入社10年未満の社員が参加。自社のエネルギー課題への取り組みを紹介した。

出光興産のCNX(カーボンニュートラル・トランスフォーメーション)戦略部バイオ・合成燃料事業課の川島弘尭さんは、同社が2030年までに社会実装を目指す先進事例を紹介した。ブルーアンモニア、e-メタノール、再生航空燃料(SAF)、リチウム電池材料などについて話した。

コスモエネルギーホールディングスの新エネルギー事業統括部の宮城裕一さんと前川愛沙子さんは、同社の脱炭素ロードマップを示しながら、次世代エネルギーの拡大策や石油事業の競争力強化・低炭素化などを説明。廃食油利用のSAF、水素ステーション、二酸化炭素(CO2)の分離・回収や、貯蔵/利活用(CCS/CCU)、CO2からのメタノールやエタノールの合成など、先進技術に言及した。

ENEOSからは、カーボンニュートラル戦略部の越海里香さん、水素事業推進部の友永篤志さん、バイオ燃料部の長尾知樹さんが登壇した。同社グループのカーボンニュートラルに向けた戦略の紹介に続いて、水素の特徴や水素ステーション事業、検討中の海外水素サプライチェーン事業を説明した。SAFに関しては、供給体制構築に向け国内外で取り組みを進めていることを紹介した。

石油連盟加盟会社若手社員のプレゼンテーション

学生の身近な活動を発表

続いて行われた学生によるプレゼンテーションには、日経BANPAKUレポーターの4人が登壇し、それぞれの活動を発表した。

東京科学大学大学院(教育工学)の小林真緒子さんは、文部科学省が2020年度から新学習指導要領に基づき本格実施している「探究学習(主体的・対話的で深い学び)」について話した。フィンランドの小学校で実験的に取り組む省電力体験「50・50 model」(電気を半分消す)などを例に、「日本でも初等教育の段階からエネルギーを学ぶことが重要だ」と語った。

早稲田大学文化構想学部の浅井詩萌さんは、出身地である北海道東川町における地方創生の取り組みを紹介。「中の人のつながりと、外の人の巻き込みが重要」として、「一人ひとりのキャリアの選択と地方創生との掛け合わせが地域活性化を生む」と力説した。

法政大学現代福祉学部の南光開斗さんは、「まちづくりと福祉との掛け合わせには、心のきらめきが大切」と話した。出身地である兵庫県宍粟市の地域課題に触れ、同県養父市における福祉をコアにした「社会的処方」や、同県豊岡市の医師が開いた図書館「だいかい文庫」などの地方創生策を紹介した。

法政大学経済学部の竹迫莉さんは、高校時代から参加してきた国際的環境団体の「気候正義」の取り組みを紹介。温暖化ガス排出における先進国と途上国、富裕層と貧困層との公平性について課題意識を示した。また、バイオガス発電施設を持つ企業と連携し、華道で出る花ごみをガス精製に混ぜることで二酸化炭素(CO2)の排出削減と残渣の肥料化にも取り組んでいることも紹介し、地域社会におけるサーキュラーエコノミーの可能性に期待を込めた。

法政大学の南光開斗さんのプレゼンテーション

テーマごとに議論を深掘り

プレゼンテーションの後は、4グループに分かれ、メンバーを入れ替えながら行うグループコミュニケーションを実施。「地方創生」「教育」「環境」の3テーマについて、若手社員と学生が意見交換し、最後にテーブルごとに対話内容を総括した。

グループコミュニケーションの様子

地方創生のテーブルでは、人口減少が主題になった。大都市で想像する人口減少と、実際に体感している生きづらさとのギャップを指摘し、具体例としてガソリンスタンドの減少を挙げた。車が必要な地方でガソリンスタンドが減っている問題を解決するには、需要を増やすことが必要だとして、「人が集まるため、祭りなどアイデンティティーの創出が重要だ」と指摘。その土地独自のエネルギー源の確保と、それに関わる産業・投資誘致が必要だと話した。

地方創生のもう一つのテーブルでは、「再生可能エネルギーと地方創生はつながる」との議論になった。具体例として、カーボンクレジットにおける企業と地方行政との連携や、トヨタ自動車による実証都市「ウーブン・シティ」(静岡県裾野市)による雇用増などを挙げた。

環境では、SAFやバイオガスについて、技術的課題や運輸コストなども検討しながら、地域内で循環する小さなサーキュラーエコノミーの実現可能性について話し合った。「各社が独自に技術開発をするのもいいが、業界全体で連携することも重要だろう」という意見があった。

教育では、教育そのものよりも、人の意識改革がテーマになった。エシカル消費に改めて注目し、ビニール袋の有料化により一般消費者の意識が環境に向かったことを指摘。SAFでは原料の廃食油の回収が課題だが、「ストレートに環境貢献を訴えるだけでなく、人々の意識を巻き込む仕組みづくりを考える必要がある」との意見で一致した。

交流会の参加者

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