植物性だしラーメンの試食会を取材 インバウンド対応の食文化発信

食品素材メーカーの不二製油は9月8日、植物性だしで作ったラーメンの試食イベント「ユニバーサルラーメンラボ−グローバルDashiエクスペリエンス」を大阪・関西万博のORA外食パビリオン「宴(うたげ)~UTAGE~」で開催した。インバウンド(訪日外国人)の食のニーズへの対応や、日本の食文化の発信につなげる関係者の思いに迫ろうと、日経BANPAKUレポーターの学生2人がイベントを取材した。

日本経済新聞大阪本社は2024年、南大阪地域を中心に関西経済の活性化を目指す産学官組織「日経南大阪REBORN(リボーン)コンソーシアム」を設立し、地元企業の不二製油などと連携してきた。イベントは、観光振興や外国人定住を考える分科会の企画として開いた。

ムスリムに対応した食を提供

マリ出身のムスリム(イスラム教徒)で分科会座長のウスビ・サコ元京都精華大学長と不二製油風味基材事業部長の齋藤努氏、レソトの幼稚園教諭、フランシナ氏が対談した。

サコ氏は、宗教上の理由で口にしないブタについて、「とんこつやチャーシュー、とんかつなど様々な表記があり、外国人には分かりにくい。食材や料理法が多彩な日本では、気づかずに食べる可能性があることが問題点だ」と指摘した。

齋藤氏は「植物性の油脂とタンパク質を組み合わせ、肉や魚、貝など動物性素材が持つ満足感を表現した『ミラダシ』というだしを開発した。世界中に日本の食文化を広めたい」と自社の技術を紹介。フランシナ氏は「豚肉を食べない人々にとって素晴らしいことだ。子どもたちが肉の風味で野菜を食べられるのも嬉しい」と評価した。

分科会座長のウスビ・サコ元京都精華大学長
不二製油風味基材事業部長の齋藤努氏

一番人気は「スンバラ」味

試食会には、同コンソーシアムの構成企業の社員や、万博の海外パビリオンの関係者など約20人が参加した。

不二製油は、ミラダシをベースに、ユズ味噌、梅、抹茶の3種類の和風ラーメンと、豆を発酵させたアフリカの調味料「スンバラ」を使ったラーメンを提供した。

投票を行うと、納豆に似た風味とコク深い味わいが特徴のスンバラ味が一番人気となり、お代わりを求める声も上がっていた。

食の課題解決に

イベント終了後、日経BANPAKUレポーターは参加者にインタビューした。

テーマパークの運営などを学ぶ大阪国際大学3年の鶴原巧翔さんは、インバウンド誘致の観点から植物性食材でラーメンを提供する意義について大手旅行会社の片岡由耀氏に質問した。片岡氏は「万博を機に来阪するインバウンドは増えているが、滞在中に直面するのが食の課題。植物性の食材しか使われていなければ、安心して日本の味をご案内できる」と答えた。

認め合い、違いを楽しむ

立命館大学3年の河野みのりさんは、学生団体で日本文化の発信に注力しており、イベントの発信手法に着目した。

「ラーメンと抹茶、スンバラなど、多彩な素材を組み合わせるコラボレーションによって発展性が生まれている」と分析し、海外からどのように捉えられているか参加者に尋ねた。

ナイジェリアの留学生、エルドゥー・アワイさんは「スンバラとラーメンの組み合わせは一番おいしかったし、ラーメンと、健康にいいという抹茶が組み合わされば、おいしいし体にも良い。一つで二つのことができるようになるのはとても興味深い」とコラボのメリットを指摘した。

河野さんは「文化を誤解され、トラブルにならないように正しく伝える必要がある」として、文化の発信のあり方についてサコ氏に質問した。

サコ氏は「交流を深めながら伝えていくのが大事。文化の違いを超え、認め合いながら違いを楽しむ過程が重要だ。万博会場で今回のイベントが開催できたのは意義深い」と力を込めた。

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