「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、約160の国と地域や多くの国内企業などが参加・出展する国際博覧会「2025年大阪・関西万博」。開催まで1年を切り、シンボルである巨大木造建築・大屋根(リング)が姿を現し始めた。今回、その建設現場を学生レポーター2人が見学。いよいよ迫ってきた万博へ、期待に胸を膨らませた。
世界最大級の木造建築がお出迎え
「大阪・関西万博」開催を約1年後に控えた2024年3月某日、建設中の万博開催地・夢洲を訪れたのは、日経BANPAKUレポーターの学生2人。甲南女子大学3年生(当時)の堤中里佳氏と岡山大学工学部1年生(当時)の三宅陽仁氏。
会場の中心部に位置する大屋根(リング)は3工区に分かれ、大林組、竹中工務店、清水建設が筆頭となる共同企業体(JV)が手掛ける。2人を案内したのは、2025年日本国際博覧会協会 整備局の出口圭一氏と大林組の担当者。リングの建築や万博について、話を聞きながら建設現場を歩いて見学した。
リングの1周は約2キロメートル、遠目からでもその大きさがわかるほど迫力満点。取材時は、木組みの立ち上げが約8割まで進んでおり、すべて完成すると世界最大級の木造建築となる見通しだ。「現代の建築で、これだけ多くの木材が使われる建物は滅多にない。しっかりと材料を調達できるかが肝でした」と大林組の担当者。同社が担当している工区の梁(はり)に使われる集成材は、福島県浪江町の工場で作られている。東日本大震災で甚大な被害を被った浪江町で、万博という世界的なイベントの巨大木造建築に関わることが、一つの復興の象徴となっている。実際に、雇用が生まれたことや、今回のような特殊なオーダーに応えられる技術力に注目が集まっている。
高さ12〜20メートル 大阪見渡す抜群の眺望
リングの上へ登ると、大阪湾を一望できる絶景が広がる。「空気が澄んでいれば明石海峡大橋まで見える大パノラマです。またリングの中には、個性豊かな海外のパビリオンとシグネチャーパビリオンが並び立ちます。それをリングの上から見下ろす風景もきっと素晴らしいと思います」(出口氏)
リングの上から見渡すと、巨大な円形がよく分かる。まさに「多様でありながら、ひとつ」という大阪・関西万博の理念を体現している。また、すでに外観の工事まで進んでいるパビリオンがあったり、中心部にある「静けさの森」に植樹されていたりと、リング以外の建設も着実に進められていることがよく分かる。
一方、リングほど壮大な木造建築が、閉幕後にどう活用されるかも注目されている。すでに20もの提案が寄せられており、現地保存も含めて検討中とのこと。
思い詰まった「リング」 完成が待ち遠しい
完成前の建設現場へ入ることができること自体が貴重な体験。今回取材を行った学生2人に感想を聞いてみた。
「実際にたくさんのラミナ(木のひき板)を貼り合わせた集成材が使われている技術を目の当たりにして驚きました。建築自体の美しさにも引かれましたが、夜はライトアップされると聞いて、会期中に訪れるのがより楽しみになりました」(堤中氏)
完成前の建設現場へ入ることができること自体が貴重な体験。今回取材を行った学生2人に感想を聞いてみた。
「実際にたくさんのラミナ(木のひき板)を貼り合わせた集成材が使われている技術を目の当たりにして驚きました。建築自体の美しさにも引かれましたが、夜はライトアップされると聞いて、会期中に訪れるのがより楽しみになりました」(堤中氏)
「思ったよりも工事が進んでいて、ほとんどリングの形が見えてきていたのが印象的でした。私は建築や土木の分野を勉強している身なので、今日の経験はとても大きな財産になったと思います」(三宅氏)
そして2人に共通した感想は、「浪江町の工場をはじめ、経済効果ということ以上に、いろいろな人の思いがリングの建設に詰まっている。そのようにして、実は多くの人が万博とつながっているのではないか」ということだった。
今日の体験を生かし万博を盛り上げたい
「今日体験したことを学校の仲間たちに共有したい。所属している団体では、2025年万博と岡山県をつなぎ、相互の魅力を発信するイベントを計画中なので、生かすことができるはずです」と三宅氏。堤中氏は「父から、70年の大阪万博で初めてコンピューターに触れて感動したと聞きました。万博ではぜひ私も生まれて初めての体験をしてみたいです」と、万博へ期待を寄せた。
博覧会協会は、「Z世代の若者には、万博を通して今後の人生に夢や希望を持てるような体験をしてほしい。そして、お2人のように、積極的に万博に参加したいという若者には、理想の未来を多様な参加者が主体となり創り上げていく取り組み『TEAM EXPO 2025』プログラムへの応募も検討してほしいです。万博が始まる前から、大学、サークル、学生有志団体などの枠組みで参加が可能です」と呼びかけている。
なお会期中の会場で同プログラムへの参加(有償)も可能で、一般参加催事の第2次募集が5月より開始される予定だ。