
日本経済新聞社大阪本社が主催した「NEXT KANSAI フォーラム 2026」で2月18日、大阪公立大学の重松孝昌副学長が「知がつながり、社会が動く―大阪公立大学の産学官民共創という挑戦-」をテーマに講演した。立場を超えた共創を生み出す仕組みや、社会課題の解決に貢献する取り組み方について解説した。
新しい大学の価値を
大阪府立大学と大阪市立大学が統合し、2022年に公立大学として日本最大規模の大阪公立大学が誕生した。2025年には、大阪城の東部に森之宮キャンパスを開設。重松氏は「合計5つのキャンパスを有機的に結びつけ、総合大学のメリットを生かしていく」と方針を示した。
通常は大学の使命として、教育、研究、地域貢献を柱にして運営するが、「大阪公立大学は都市シンクタンク機能と技術インキュベーション機能を新たに追加し、新しい大学の価値観と倫理観を持たせたい」と力を込めた。

企業・行政とも共創
技術インキュベーション機能については、2つの特徴を挙げた。1つは、起業や起業後の成長を支援するスタートアップ創出・支援センター「SUCSUC(サクサク)」の設置だ。「教員のみならず、学生にも積極的に取り組んでもらっている」と説明した。
もう1つが産学官民の共創の仕組みだ。「共創パートナーズ」という制度を設け、企業だけでなく、市町村の行政機関も参画している点に触れた。
「特定のテーマを決めて取り組むだけでなく、大学が企業や行政機関とコミュニケーションを取りながら、何ができるのかを一緒に考えていく」という方針を示し、さらなる共創の広がりに向け、来場者らにも連携を呼びかけた。
未来社会の創生へ
都市シンクタンク機能については、地域や都市の課題解決に貢献することに加え、「未来社会の創成」を掲げた。「いろいろな人の未来社会像を組み合わせ、実現していくための多様な手段を考えていく」という。
「共創研究グループ支援事業」として、大学と行政、民間企業などによる共創研究のグループの設立支援や、研究テーマを事業化して社会実装することをサポートする。

世界の課題解決に貢献
世界規模の課題に挑む試みとして、大学の活動をアジアから世界に発信する会合「大阪アジアラウンドテーブル」を紹介した。
2025年11月に開催した際には、東南アジアの6カ国から政府関係者らが来日した。「ヘルスケア」「デジタル」「防災」の3つのテーマの責任者たちが、それぞれが抱えている課題を出し合ったのが特徴で、課題を共有した上で対策を検討する機会となったという。重松氏は「今後の取り組みにつながる非常に有意義な意見交換会だった」と評した。
このほか、都市シンクタンク機能の例として、地域連携フォーラムの開催や、万博会場でも採用した地下水を活用した地域冷暖房システム、市民参加型の防災プログラム、動物園と連携した高校生向けフィールドワークなど、多岐にわたる取り組みを紹介した。
「ものの見え方」を変える
女性研究者との連携にも力を入れている。4年生大学に進学する女性の学生数が少ないことについて、「女性は工学部に行かなくていい」などといった社会的なバイアスがあると指摘。「こうした意識の変革は大学単独では難しい」として、地域や家庭など社会全体で継続的に議論していく必要性を訴えた。女性の大学進学を後押しするとともに、女性が卒業後に活躍できる場の提供についても協力を求めた。
重松氏は、「受験生が大学を見る風景、あるいは大学を通して社会を見る風景を変えていきたい」と強調。「男女ともに、社会の『ものの見え方』を変えていきたい」と述べ、大阪公立大学として、様々なチャレンジを続けていく考えを示した。

