学び直しが未来をひらく令和6年能登半島地震からの創造的復興を担う能登里山里海SDGsマイスタープログラム

日本経済新聞社大阪本社が主催した「NEXT KANSAI フォーラム 2026」で2月18日、金沢大学の篠田学長補佐は万博と能登復興、大学の学びについて語った。


万博のシンボル・大屋根リングの一部の木材が、石川県珠洲市の復興公営住宅の資材として使われることになった。万博のレガシーが被災地域ともつながっている、という観点から本学の取り組みについて紹介する。

2024年1月の能登半島地震発災後、石川県の大学として復旧・復興の推進に資するためすぐに動き出し、1カ月が経たない1月30日に「能登里山里海未来創造センター」を立ち上げた。センター立ち上げ当初は5部門に分かれていたが、2025年4月に組織を再編し、「未来創造部門」「ひとづくり部門」「まち・なりわいづくり部門」で取り組みを続けている。

このうち「ひとづくり部門」では防災・減災から復旧・復興まで対応できる高度人材の輩出を目指し、学生を受け入れているほか、社会人を対象とするリカレント(学び直し)プログラムも提供している。

一方、本学は約20年前から過疎や高齢化によって里山・里海が荒廃し、伝統文化や伝統産業の衰退が危惧される能登地域で人材育成・教育の拠点を作ろうと、「能登学舎」(石川県珠洲市)を開設。ここではリカレントプログラムとして「里山里海SDGsマイスタープログラム」を展開し、生物多様性や環境保護をメーンテーマに、地域の特徴を学びながら人口減少に対応する人材を育成してきた。

「能登の里山里海」は2011年6月に「トキと共生する佐渡の里山」とともに、日本で初めて世界農業遺産に認定されたが、その際「行政と大学が連携した人材育成」が特色ある取り組みに認められるなど対外的な評価も受けてきた。

そのような中で能登半島地震が起きた。2024年6月、石川県は被災者の生活再建に加え、能登の将来を見据えた復興を目指す「創造的復興プラン」を策定。その重点項目の一つに「高等教育機関と連携した復興の推進」が掲げられ、能登里山里海SDGsマイスタープログラムにも改めて期待が寄せられることになった。

一方で被災地にとっては復旧復興が最優先であり、生物多様性に関する教育プログラムを継続していいのか非常に悩んだ。しかし真の復興には欠かせない取り組みだという地元行政からの強い後押しもあり、生物多様性の特徴を学びながら復興についても考えるプログラムに内容を進化させた。

今年度は幸いにも過去20年間で最多の受講生が集まり、東京や大阪など遠隔からの参加もある。プログラムでは地域住民と話しあい、ワークショップなどを通じて議論を深めながら実際の復興へつなげることを大切にしている。

たとえば珠洲市内の集落で被災後に住めなくなった住宅が公費解体され、空き地になった風景が住民の心にダメージを与えていることを知った。そこで、その土地を活用し、災害時でも住民が自前で水と電気を調達できるようにする自立分散型コミュニティーの研究拠点を設けることにした。近くには大屋根リングの木材を使った公営住宅も作られる予定で、人が集う場所を復活させようと動き始めている。

また毎年、珠洲市内で“大人の文化祭”ともいえる「能登の里山里海学会」を開いており、ここでも地域住民との対話を続けている。

「人生100年時代」と言われる中、さまざまな背景を持つ人たちが集う社会では、「学び」が共通言語になるのではないだろうか。これまで地域は住民・企業・行政の三者でつくられるとされてきたが、これからは大学も仲間として加わり、ともに伴走しながら、新たな復興の未来社会を築いていく必要がある。本学は地域に根付いた「学び直し」を通じ、あらゆる世代が未来を共創できるよう、その役割を果たしていきたい。

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