日本経済新聞社大阪本社が主催した「NEXT KANSAI フォーラム 2026」で2月18日、大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」をプロデュースした中島さち子氏が講演した。「クラゲ館が示した未来–創造性の民主化と共創のレガシー–」と題して、万博関連の取り組みを紹介。遊びや音楽をきっかけに、誰もが創り手として力を発揮する社会づくりに向け、さらなる共創を呼びかけた。
全ての人の創造性を引き出す

「いのちの遊び場 クラゲ館」の自由入館ゾーンには会期中に約268万人が来場。小さい子どもから高齢者まで、また障害者や様々な国の人など多彩な人々が集ったという。中島氏は「準備段階から共に創る過程を大切にしてきた。本当に多くの方々と共に創り上げた」と振り返った。
協賛企業の担当者から「これほど異なる業界、アーティスト、立場、年代、国籍の人々がごちゃまぜになって共創した経験は他にない」との声が寄せられたといい、「これこそがクラゲ館の特長で、『創造性の民主化』と呼んでいる」と説明した。
中島氏は「全ての人に創造性がある。それを引き出す社会にしたい」と力を込めた。創造性が既存の評価軸では測れない多様な価値を生みだし、イノベーションや社会課題の解決につながる可能性があるという。
「遊び」と「つながり」が大事
クラゲ館では創造性を引き出す手段として「遊ぶこと」と「つながること」を重視した。遊びや音楽をテクノロジーと組み合わせ、触れると多彩な音が鳴る楽器で来場者同士が即興演奏できる体験型展示など、五感や身体性を使う仕掛けを施した。
ワークショップは約250回実施し、企画側には小学生や高齢者、障害のある人など多彩な人々が参画した。型にはまらない遊びや、参加者同士が影響を与え合う中で、「自分の創りたいものが見えてくる」という。

世界の文化を五感で楽しむ
万博の特徴を生かし、海外パビリオンとの共創にも力を入れ、イタリア館とは15回ほどのコラボレーションを実施した。万博関連では、なんと40カ国以上とのコラボを行った。
コラボの手法の一つが音楽による「協奏」だ。中島氏が主宰するクラゲバンドと、カナダの先住民族やモザンビークの世界最古の木琴「ティンビラ」などが共に演奏した。
中島氏は「世界中の文化を五感で楽しめたのが万博の面白さだった」と説いた。

インクルーシブな場づくりを継続
アフター万博について、中島氏は「これまで築いたつながりを残していくため、場づくりが必要だ」と話し、継続的にイベントを開催する方針を示した。
大小様々なイベントを開催しており、2026年2月末には大阪・咲州(さきしま)で1000人規模の催しを開催。8月8~9日には同じく咲洲で大型アフター万博イベントを計画しているという。
「インクルーシブ(包摂的)な場をつくることがクラゲ館の精神だった。これを万博の精神としても残していきたい」と展望を語った。

「ごちゃまぜ」を実演
講演に続いて、「『ごちゃ混ぜ×つくる』の可能性 AR(拡張現実)の音楽遊びや未来の絵本体験&トークセッション」を実施。
日経BANPAKUレポーターの大学生3人と共に、クラゲ館に設置していた体験型展示「ごちゃまぜオーケストラ」を披露した。
さまざまな絵や写真のカードをカメラにかざすと、関連した3Dアニメーション動画がモニターに現れ、音楽が流れる仕組み。学生たちが複数のカードを組み合わせると、即興演奏のような音楽が会場に響いた。
ARを組み合わせた「未来の絵本」は、絵本に端末をかざすと読み上げる音声が流れたり、3Dアニメーションが動いたりする。読んでいる人が絵本の世界に入り込んだような映像も作れ、大学生たちは海の中に映る自分の姿に目を輝かせた。
岡本彩也さん(大手前大学2年)が「テクノロジーやサイエンスの分野に、小さい頃から触れられる環境はすばらしい」と感想を述べると、中島氏は「ARは実際に遊べることが重要。テクノロジーだけではなく、人間とのコラボレーションを大切にしている」と応じた。

アフター万博への思い
中島氏と大学生は、万博の成果やアフター万博に向けても意見交換した。
クラゲ館で日本文化に関するワークショップを実施した小寺沙朋さん(立命館大学3年)は「皆さんの支えのおかげで伝える力が身につき、国内外の来場者に楽しんでもらえた」とクラゲ館のスタッフとの共創の成果を紹介。
石田渚さん(武庫川女子大学4年)はアフター万博に向けて「小さな子から中高生まで、みんなが楽しめることをやっていきたい」と抱負を語った。中島氏は「皆さんを巻き込みながらみんなで盛り上げていきたい」と締めくくった。

※肩書はイベント実施当時のものです
