日本経済新聞社大阪本社が主催した「NEXT KANSAI フォーラム 2026」で2月18日、サラヤの更家悠介社長は万博レガシーとして「ブルーエコノミー」の取り組みについて講演した。

サステナブルな21世紀の経済と環境のビジョン「ブルーエコノミー」を推進する当社は、大阪・関西万博のパビリオン「ブルーオーシャン・ドーム」を通じて海の持続的活用を訴えてきた。この取り組みを万博で終わらせるつもりはない。経済の力で社会課題を解決する――とりわけプラスチックによる海洋汚染の克服に、引き続き挑む決意だ。
地方創生にも力を入れており対馬、宮津、熊野、函館、福島など各地と連携し、海の産業をサステナブルに育てている。観光に加え、海上モビリティ、センサー&モニタリングなどテーマは幅広い。それらを「ブルーエコノミー」という切り口で束ね、地域の実装へつなげたい。

一方で懸念もある。AIなど技術進歩が加速するほど、それを適切に管理し、社会にとって望ましい形で活用するためのガバナンスが追いつかない恐れがある。持続可能性を無視したビジネスや新技術の急拡大、政治的利己主義の強まりは、世界と地球を分断へ向かわせる「遠心力」になりうる。だからこそ、思想やネットワーク、価値設計、幸福、地方創生といった「求心力」を育て、両者のバランスで持続可能性を確かなものにしたい。
その基盤になるのが、多様性と包摂性――互いを認め合う精神である。日本が古くから培ってきた自然への畏敬には、そのヒントがある。草木や石ころにも仏が宿る――「山川草木悉有仏性」という感覚。神道と修験道、仏教が重なり合いながら共存してきた熊野は、その象徴だ。いま私たちは「地球」という単位で文明を捉え直す転換点に立つ。人間の都合だけを優先すれば、社会も地球も分断してしまう。だからこそ、生物多様性や社会の多様性を尊重し、インクルーシブな社会を軸に据えなければならない。
万博の会期中、会場の外ではウクライナとロシアの戦争が続き、パレスチナ情勢を含め対立や衝突が相次いだ。だが藤本壮介氏が設計したリングの内側では、158の国・地域と7つの国際機関が集い、互いを思いやりながら平和に交流していた。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。「未来社会」は自動的にやって来るものではなく、私たち自身が目指す姿を考え、選び、育てる必要がある。その指標となるのがSDGsだ。万博でこのビジョンを“形”として示せた意義は大きい。万博は2030年のSDGs達成を加速させるドライバーになっただろう。

私たちの取り組みも紹介したい。長崎県・対馬には海流の関係で漂着ごみが集まり、太平洋上にはいわゆる“ごみベルト”のようなものまで存在する。この状況を改善しようと子会社「ブルーオーシャン対馬」を設立し、海洋プラスチックごみの回収や処理にとどまらず、リサイクル技術の確立や新たな産業の創出にも取り組み、地域経済の活性化と環境負荷の低減の両立を目指す。
対馬市とは「対馬モデル(循環経済モデル)」の研究開発連携協定を結び、関西経済同友会とも協力しながら、海洋問題の解決に取り組んでいる。この事業モデルは万博でも発信し、アジア太平洋地域の島々に向けて展開の可能性を示した。
また北海道・函館では函館市を通じて大学や企業と協同し、減少している藻場の再生及び、海の生物多様性の保全を行い、二酸化炭素排出量を削減することを目指す。ほかにも海の課題解決に向けたさまざまな取り組みに力を入れているところだ。
一方、万博のレガシーは海にとどまらない。AIを活用した健康チェックや脈波測定などの機器開発、社内のプラスチック包装の循環化にも取り組み、衛生・環境・健康の領域で社会に貢献している。このような活動は単独で進めるよりもパートナーと組んだほうがスピードは速い。今後は世界がもっと平和になり、お互い理解・協力し合いながらビジネスを展開するべきだ。これからもパートナーを増やしながら、ポスト万博のレガシーとして「ブルーエコノミー」の取り組みを前へ進めていきたい。

