日本経済新聞社は9月10日、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する「未来志向の水中工事」について学ぶ催しを大阪本社(大阪市)で開催した。社会課題の解決に向き合うZ世代の学生たちに、学びや交流の機会を提供する「日経未来社会共創ゼミ」の一環で、青木あすなろ建設(東京・港)の担当者が大阪・関西万博に出展している水中施工ロボットについて説明した。

「未来の水中工事」の意義
青木あすなろ建設は、建機大手のコマツと共同で大阪・関西万博の「未来の都市」パビリオンに出展している。テーマは「誰もが活躍・人々の命や暮らしを守る『未来の水中工事』」だ。水中施工ロボットの活用は、防災・減災のための河川や海の浚渫(しゅんせつ)工事や、海藻などが二酸化炭素(CO2)を吸収して海底に炭素を蓄積する「ブルーカーボン」の取り組み、遠隔操縦による多様な働き方の実現に役立つという。
同社の大阪本店技術担当部長で万博出展プロジェクトチームリーダーの浦田隆司氏は、解決したい社会課題について説明した。
1つ目は激甚化、頻発化する自然災害への対応だ。防災の観点からは、河川の氾濫や津波の被害を軽減するため、堆積した土砂などをさらい、水深を保つ。また、災害時には迅速な復旧に努める。2つ目は、干潟を造成して生態系を再生することにより、ブルーカーボンの吸収量を増やして地球温暖化対策につなげることだ。
一方、少子高齢化により建設業界の人手不足が深刻なことに対応するため、容易な遠隔操縦の仕組みを構築し、ゲーマーや障害者など様々な人材が活躍できる現場づくりを目指す。
浦田氏は、水中施工ロボットの運用を通して「災害大国、海洋大国の日本で、皆さんと一緒に未来をつくっていきたい」と呼びかけた。

「工事現場を一新」
水中工事の現状と今後の展望については、同社で水陸無人化事業を担当するグループリーダーの飯塚尚史氏が解説した。
共同出展しているコマツは、1970年大阪万博の翌年にラジコン操縦の水陸両用ブルドーザーの量産を開始した。青木あすなろ建設は、このうち現在も稼働中の5台全てを所有し、東日本大震災の災害復興を含む1200件以上の水中工事で知見と施工技術を蓄積してきたという。ただ、操縦には熟練の技術が必要で、最大水深は7メートルという課題もある。
現在コマツと共同で実証実験中の水中施工ロボットは、自動制御とICT(情報通信技術)機能により誰でも簡単に操縦できるようにし、最大水深50メートルまで対応可能にすることが目標だ。軽油エンジンを電動に変えるなど、環境へも配慮する。
2028年からは量産を開始する見込みといい、飯塚氏は「工事現場を一新したい」と力を込めた。

気づきを生かす
講演の後、学生たちはグループに分かれ、それぞれが向き合う課題に向けて何ができるかを議論した。
函館工業高等専門学校4年の鷲津心海さんは無人化や遠隔操縦に着目し、「各地で少子高齢化が進んでおり、無人の技術はインフラ整備や家造りなどでも役立つのではないか。安全な工事という視点は大切にしていきたい」と話した。
自然災害に関心があるという木更津工業高等専門学校4年の山田晴大さんは「地球温暖化対策は先進国と後進国で差が生まれないようにするのも大切だ。地球レベルの視点を持つ必要性を実感した」と強調した。

青木あすなろ建設の社員に積極的に質問していた徳山工業高等専門学校4年の森本奏太さんは、海の工事やインフラの維持管理に関心があるという。「ブルーカーボンの形成に向けた考えが素晴らしかった。SDGsの視点はこれからの未来に外せない要素だ」と振り返り、自身の取り組みに生かしていく意向を示した。

ゼミの後には、登壇者や学生たちの交流会もあり、積極的に意見交換したり、親交を深めたりする姿が見られた。

