国内初のSAF量産拠点を見学 廃食用油から精製

SAF製造設備を見学した学生たち

日本初の再生航空燃料(SAF)の量産拠点、コスモ石油の堺製油所(堺市)を7月28日、日経BANPAKUレポーターら6人の学生が見学に訪れた。

SAF事業は、コスモ石油、日揮ホールディングス、レボインターナショナルの3社が出資するサファイア・スカイ・エナジー(横浜市)が手掛ける。堺製油所の一角に建設されたSAF製造設備の敷地面積は約1600平方メートル。高さ約50メートルの2つの塔内で加熱と蒸留を行い、沸点の違いを利用してSAFを精製する。年間約3万キロリットルの生産能力を有する。

学生たちは、バスで敷地内を移動し、SAF製造設備を間近で見学。エネルギー産業に関心があるという慶應義塾大学2年の江頭奈桜さんは「想像していたよりも巨大だ」と塔を見上げた。

CO2を84%削減

見学会では、コスモ石油次世代プロジェクト推進部の佐藤裕平氏がSAFについて説明した。回収した廃食用油から製造するSAFは、原料調達から製造・消費までのライフサイクルベースで、石油由来のジェット燃料に比べて84%のCO2削減効果がある。自動車のように電動化が困難な航空セクターにおいては、カーボンニュートラル達成のためにSAFが不可欠だという。

堺製油所では3月末からSAFの量産を始め、4月の大阪・関西万博開幕日に展示飛行を予定していた航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」に初供給した。悪天候で展示飛行は中止となったが、一時的に3機が離陸して大阪の空を舞った。その後、国内外の航空会社が運航する旅客便、貨物便にも順次供給されている。

原料となる廃食用油の資源化を目指すFry to Fly Projectでは、業種や団体の枠を超えた230以上の企業・団体(7月時点)が参画している。企業だけでなく、家庭から出る廃食用油の回収も働きかけているといい、佐藤氏は「個人も資源循環のネットワークに参加できる」と力を込めた。

コスモ石油の担当者から施設の説明を受ける学生

ビジネス化には課題も

石油由来のジェット燃料に比べてコスト高であることや、廃食用油を安定的に調達できるかといった課題があることから、学生からは「ビジネスとして成り立つのか」という質問も。佐藤氏は「日本政府は2030年までに国内で使用する航空機燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げており、その実現を後押しするための政府支援も制度化されている」と説明した。

昆虫食関連の起業をした近畿大学大学院修士2年の清水和輝さんは「環境に良いことは、コストが高くなりやすい。国の動きも踏まえ、バランスよく事業を展開する順序立てが学びになった」と話す。

熱心にやりとりするコスモ石油関係者と学生たち
廃食用油回収ボックスを設置するセルフステーション長曽根
廃食用油回収ボックス設置イメージ(セルフステーション長曽根)

見学会を終え、京都大学4年の吉田健太さんは「1社単独ではなく、様々な事業者との連携によってプロジェクトを進めているのが印象的だった」。

海外で長期滞在していた武庫川女子大学4年の石田渚さんは「ドイツの友人と飛行機のCO2排出について罪悪感があると話し合ったことがある。環境への影響が抑えられれば利用者の心の負担も軽くなる」と期待を寄せた。

立命館大学3年の河野みのりさんは、北海道在住の頃、両親が自宅の廃食用油をペットボトルに入れて回収事業者に渡していたことを思い出し、「自分たちにできることが身近にあるのだと改めて思った」と感慨深げだった。

京都産業大学4年の若月拓海さんは「資源が少ない日本で国内産のSAFが生まれるのは重要だ。周りに伝えていきたい」と意欲を示した。

SAFの取り組みに関心を示す学生たち

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