変革期の安定供給と多様化に備えを

6月9日、大阪・関西万博のテーマウィーク会場で、「NIKKEI 食の未来シンポジウム」が開催された。持続可能性・技術革新・文化・健康といった横断的なテーマで議論がされた。食を通じた社会課題の解決と価値創造に向けた取り組みが紹介された。

冒頭では、農林水産省 大臣官房 みどりの食料システム戦略グループ グループ長 久保牧衣子氏が、気候変動の影響を最も受ける農林水産業こそ温室効果ガス削減に率先して取り組むべきであり、「みどりの食料システム戦略」により持続可能な食料システムの構築を目指すと述べた。

女子栄養大学 教授 中嶋康博氏は、食の関心が生存から楽しみへと変化する中で、持続可能な食料安全保障の重要性を強調し、供給力強化と環境調和型システム構築を目指すべきであると語った。

クボタ 技術開発統括部 技術連携チーム 理事 越智竜児氏は、「プラネタリーコンシャスな農業」を提唱し、無人化・データ管理・資源循環技術による持続可能な農業の実現に向けた取り組みを紹介した。

クボタ 越智竜児氏

日本ハム 執行役員 大石泰之氏は、たんぱく質の安定供給に向けた「プロテイノベーション」戦略を紹介し、AIやDXによる既存事業の進化と新規事業創出への意欲を示した。日経BP 総合研究所 チーフコンサルタント 主席研究員 藤井省吾氏は、たんぱく質の栄養的価値と「プロテインクライシス」への懸念を示し、安定供給の必要性を訴えた。

日本ハム 大石泰之氏
日経BP 藤井省吾氏

日世 執行役員 経営企画部長 岡本明氏は、VUCA時代に対応する新たな経営理念を策定し、「笑顔あふれる幸せづくり」を掲げて社会との共創を目指すと述べた。

日世 岡本明氏


大阪大学名誉教授 吉森保氏は、細胞の新陳代謝と有害物除去を担う「オートファジー」に着目し、健康寿命延伸に向けた研究と社会実装の取り組みを紹介した。UHA味覚糖 執行役員 松川泰治氏は、吉森氏との共同研究に基づく商品開発や啓発活動を通じて、オートファジーの普及を目指すと述べた。

大阪大学 吉森保氏
UHA味覚糖 松川泰治氏

クロージングセッションでは、菊乃井 主人 村田吉弘氏、京都府立医科大学大学院 教授 内藤裕二氏、食文化研究家・料理編集者 畑中三応子氏が登壇し、日経BP 総合研究所 客員研究員 西沢邦浩氏の進行のもと、「食の現在から見えてくる未来」をテーマに討論が行われた。和食の価値や食育の重要性、食を通じた人との絆の再構築など、多様な視点から未来の食卓が語られた。

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