産官学の取り組みを発信
日本経済新聞社は2025年5月19日、大阪・関西万博のテーマウィークスタジオで「未来に求められるモビリティの姿とは」と題したシンポジウムを開催した。
オープニングには古賀友一郎経済産業副大臣からのビデオメッセージを放映。続いて経済産業省の伊吹英明製造産業局長が基調講演を行い、ソフトウェア定義車両(SDV)や自動運転の開発、人材獲得・育成など、モビリティ社会の実現に向けた政府の取り組みを紹介した。研究者からは東京大学大学院工学系研究科の青山和浩教授が登壇し、いすゞ自動車の寄付で同大学院内に設立した「トランスポートイノベーション研究センター」の研究内容について解説した。


企業からは、自動運転スタートアップのティアフォー(東京・品川)の加藤真平最高経営責任者(CEO)と、自動車用照明大手の小糸製作所の勝田隆之技術本部長が講演。ともに自動運転の重要技術を担う企業として、モビリティ社会に貢献する意気込みを語った。

地球温暖化や少子高齢化対策にも
「万博で語る 未来のモビリティ」と題したパネルディスカッションでは、「モビリティの現状とこれから」「自動運転」などのテーマでさまざまな意見が交わされた。
国土交通省の猪股博之物流・自動車局課長は「地球温暖化や少子高齢化という困難な課題があり、対応するためにはモビリティの役割が極めて重要になる。さまざまな新技術が積極的に実装されるよう、国としても政策に注力したい」と述べた。
大阪・関西万博では、いすゞ自動車の電気自動車(EV)の路線バス「エルガEV」がシャトルバスとして採用されている。同社の片山正則会長は、開発の背景に触れ「このクラスの車両の開発には常識的には33カ月ほど必要だが、その半分しか期間がなく、お断りすることも考えた。しかし、部品のサプライヤーや乗用車メーカーなどの全面的な支援を受けて万博に間に合わせることができた」と力を込めた。
日本自動車研究所(東京・港)の鎌田実所長は、モビリティ社会のサービスについて「特に期待しているのがデマンドバス。マイカーを持つ必要がなくなり、免許を返納した高齢者や外出先で飲酒する人も利用できる。生活を楽しむことや外出の促進、コミュニティーづくりといったこともトータルで考えていく必要がある」という視点を示した。
モビリティ・ジャーナリストの楠田悦子氏は、米国や中国で無人タクシーの実用化が進む現状を受け、「日本は遅れていると言われるが、それはタクシーだけ。バスやトラックは突き抜けて頑張っている。何が遅れていて、何が進んでいて、勝ち筋は何か。私自身も含め、日本人はしっかり知る必要がある」と正しい現状認識の必要性を訴えた。
