日本経済新聞社は4月5日、大阪・関西万博のテストラン(リハーサル)に参加したZ世代の学生たちの交流会を大阪市住之江区のアジア太平洋トレードセンター(ATC)で開催した。
社会課題の解決などに取り組む70人の学生が参加。万博会場での体験について尋ねたアンケートでは、およそ2人に1人が自身の活動の進展に万博が役立つと感じたことが分かった。

日本経済新聞社大阪・関西万博室は、社会課題の解決や万博に向けて活動している学生や学生団体に共創の機会を提供しようと、折に触れ情報発信や交流の場を設けている。
今回の交流会は、万博会場の体験で得た知見を共有し、今後の活動に生かしてもらうのが目的だ同室主催のこれまでのイベントに参加した学生を中心に呼びかけた。

先端技術に注目
テストラン参加後のアンケートで、万博会場での体験から個人や団体の活動に生かせると感じた点を聞いたところ、38件の前向きな回答が寄せられた。
会場のシステムやパビリオンで展示されていた先端技術は注目された点の1つだ。
高校生の探究活動を支援している大阪大学の学生団体「Flagship(フラッグシップ)」の河野一愛さんは、会場やアプリで運用されている自動翻訳システムに着目した。「同時通訳の機能が非常に魅力的。高校生の活動を世界の人にも届けられるようになる」と話す。
がんの研究に関心がある大阪大学の森田潤さんは「大阪ヘルスケアパビリオンで知ったことを使ってみたい」と意欲を示した。

世界とつながる機会
158の国・地域が参加する規模を魅力と捉える意見も目立った。
規格外で廃棄される野菜を子ども食堂で活用している近畿大学の学生団体「食品ロス削減プロジェクトC.S.S」の中野桜さんは、子どもの好みに対応できるレシピ開発の大切さを挙げ、「世界の料理を知ったり食べたりできるので、新しいレシピを考案する手掛かりになる」という。
兵庫県西脇市を中心に生産される織物「播州織」のPRを手がける追手門学院大学・西脇多可プロジェクトの岸本拓海さんは、世界各国の織物関係者との交流を「播州織を世界に広めるきっかけになる」と期待する。
一方、万博に関する学生の関心度を高める必要性を説く声もあった。
若者の社会参加を促すNPO法人ドットジェイピーの学生スタッフ、中村優実さん(同志社大学)は、会場での学びを経て「多くの学生に万博を知ってもらった方が良い」と、企業などと連携した仕掛けづくりについて提案していた。
進行役を務めたコンサルティング会社、ドリアイイノベーション(大阪市)の林俊武代表社員は「共創がテーマの大阪・関西万博は、若い人のためにある。万博を“使い倒し”、新しい社会を創り上げてほしい」と呼びかけた。

2050年への思いも表現
会場には2050年の世界で新たに実現してほしいことや、なくなっていてほしいことなどを付箋で貼り付けるスペースを設置した。「気軽な宇宙旅行」や「大学無償化」の実現を求める思いなどが並ぶ一方、なくなってほしいものとして「貧困」や「農業に対するマイナスイメージ」が書き込まれた。
ボードを企画した甲南女子大学の高橋真央教授(国際教育協力)は「言葉に表して、声を出していくのが大事。いろんな世代と対話をしながら課題や対策を考えていってほしい」とエールを送った。

意見交換やつながりづくり
立食形式で交流する場では、学生のほか、ビジネスパーソンらも含めた約100人が参加し、意見交換やつながりづくりに励んだ。
日本経済新聞社大阪・関西万博室の楢崎健次郎室長は「万博を見るだけでなく交流の機会にし、新しいものを生み出すきっかけにしてほしい」と学生の活躍に期待を寄せる。
同室は2025年度、持続可能な社会づくりを考えていくための連続講座「日経未来社会共創ゼミ」を開催予定。7、9月には大阪・関西万博の会場で学生団体が情報発信する場も設ける。
社会課題の解決に取り組む学生や学生団体を対象に、日本経済新聞社のサイト「NIKKEI未来社会共創ENGINE」での情報発信や学生取材班としての参加も随時受け付けており、積極的な参加を求めている。
